美容室のサイトの標準的な構成
まず、実際に1店舗のサロンサイトを作るときの標準的な構成を挙げます。おおむね6〜10ページの規模です。
| TOP | 店の第一印象を決めるページ。各ページへの入口を兼ねます。 |
|---|---|
| ABOUT / CONCEPT | 理念やコンセプトを言葉にするページ。他のどこにも置かれていない情報が入ります。 |
| MENU | メニューと料金。ポータルとは見せ方を変える価値があるページです。 |
| STAFF | スタッフ紹介。撮影の質がそのまま店の印象になります。 |
| INFORMATION / ACCESS | 営業時間、定休日、住所、地図。来店前に最も見られる実用情報です。 |
| RESERVATION | 予約への導線。ページとして独立させず、ポップアップで処理することも多い部分です。 |
| CONTACT | お問い合わせフォーム。予約とは別の相談窓口として置きます。 |
| RECRUIT | 採用情報。必須ではなく、余裕があれば、という位置づけで提案しています。 |
| プライバシーポリシー | フォームを設置する以上、必要になるページです。 |
この並びを見て、特に目新しいものはないと思います。重要なのは、どのページを置くかよりも、それぞれのページが何のために存在しているかです。役割がはっきりしていないページは、あってもなくても同じになります。
以下では、特に考え方が分かれる3つのページについて書きます。
ABOUT/CONCEPT ― どこにも書かれていないことを置く
サロンの理念やコンセプトは、ポータルサイトにもSNSにも、ほとんど載っていません。載せる欄がないからです。
ところが実際にヒアリングで伺うと、その内容が驚くほど奥深いことがあります。なぜこの場所で開業したのか。どういう時間を過ごしてほしいと思っているのか。何年もかけて考えてきたことが、どこにも出力されないまま店の中だけに留まっている。
このページの価値は、単体で読まれることよりも、他のページの見え方を変えることにあります。
理念を知ったうえでスタイル写真を見ると、なぜこの仕上がりなのかが分かる。内装の写真を見ても、なぜこの素材なのかが見えてくる。同じ情報でも、背景を知っているかどうかで受け取られ方が変わります。コンセプトページは、サイト全体の読み方を規定するページです。
だから、ここを「それらしい言葉」で埋めるのが最ももったいない使い方です。「お客様一人ひとりに寄り添う」といった文言はどの店にも当てはまるので、書かれていないのと変わりません。実際にヒアリングで出てきた、その店にしか言えない言葉を残すべき場所です。
STAFF ― 店をもっとも表現するページ
しっかりと撮影されたスタッフ一覧は、店をもっとも表現するページだと思っています。
内装の写真がその店の空間を伝えるのに対し、スタッフの写真はその空間にいる人を伝えます。どういう距離感の店なのか、どんな空気で施術が行われるのか。言葉で説明しにくい部分が、写真の撮り方ひとつで伝わります。
逆に言えば、ここを既存の写真で済ませてしまうと、効果が大きく落ちます。撮影のトーンがばらばらだったり、背景がその場しのぎだったりすると、それだけで店全体の印象が緩みます。撮影に予算を割くとき、内装と並んで優先度が高いのがスタッフ写真です。
もうひとつ、このページにはInstagramへの導線としての役割があります。
スタッフ個人のアカウントへリンクを置いておくと、サイトを見た人がそのままフォローに進みます。サイトは店を伝える場所、Instagramは人を伝える場所なので、この順序で流れるのは自然です。フォロワーが増えれば、次回以降の来店のきっかけも増えます。
入れ替わりへの備え方
美容室はスタッフの入れ替わりがある業種なので、全員を掲載すると更新が追いつかなくなります。退職した方が何年も載ったままになっているサイトは珍しくありません。
対策として、掲載範囲を絞る方法があります。スタイリストのみを掲載する、あるいはオーナーだけを紹介する形です。人数が少なければ更新の頻度も下がりますし、一人ひとりを丁寧に見せられるので、結果として印象も良くなります。
全員を載せることが目的ではないので、運用を続けられる範囲を先に決めておくのが現実的です。
MENU ― 同じ価格でも、見せ方で価値が変わる
メニューと料金はポータルサイトにも載っているので、自社サイトには不要だと思われることがあります。ただ、私はここを重要なページだと考えています。理由は、見せ方によって価値の伝わり方が変わるからです。
ポータルのメニュー表は、比較のためのフォーマットで作られています。すべての店が同じ形式で、同じ文字組みで並ぶ。その中では、どれだけこだわった施術メニューでも、価格と所要時間の羅列として表示されます。クーポンと並べば、なおさら安く見えてしまう。
同じ内容を自社サイトで、余白を取って、書体を選んで、必要な説明を添えて見せると、受け取られ方が変わります。何にどれだけの時間をかけ、なぜその価格なのかが伝われば、金額は比較対象ではなく理由のある数字になります。
ポータルと情報が重複することを気にする必要はありません。役割が違うからです。ポータルでは条件を確認してもらい、自社サイトではその内容の価値を理解してもらう。同じメニューでも、担っている仕事が違います。
作らないほうがいいページ
ページ構成の話で、最も伝えたいのはここです。
提案されることが多く、しかし多くのサロンで機能しないのが、更新を前提としたコンテンツです。ブログ、お知らせ、スタッフ日記、キャンペーン告知。どれも「更新すれば効果があります」と説明されますが、その前提が成立しません。
美容師は忙しい職種です。営業時間はほぼ施術で埋まり、空いた時間は準備と片付け、そしてSNSの投稿に使われます。その合間に記事を書き続けられるサロンは、実際にはごく少数です。
問題は、更新されないこと自体ではなく、更新されないコンテンツが古くなっていくことです。最終更新が3年前のお知らせ欄、去年で終わっているキャンペーン告知。それらは「情報がない」より悪い状態で、店が動いていないような印象を与えます。
ですので、当社からは更新コンテンツを提案していません。明確なご要望がある場合にのみ設けます。
代わりに、何年経っても古びない構成にしておく。理念、内装、メニュー、スタッフ。これらは頻繁に変わるものではないので、一度きちんと作れば長く使えます。日々の動きはInstagramに任せ、サイトからそこへ導線を引いておけば、更新されている感じは十分に伝わります。
1ページで作る場合に考えること
開業時など、予算を抑えて始めたい場合は、1ページ完結型という選択肢があります。この場合、何を削るかという発想になりがちですが、実際には少し違います。
できれば、載せたい情報は全部載せたい。理念も、メニューも、スタッフも、アクセスも、来店を検討する人にとっては必要な情報だからです。削ると判断材料が減ります。
問題になるのは情報量ではなく、密度です。すべてを詰め込むと窮屈になり、読む気をなくさせます。
ですので1ページで作る場合は、ひとつひとつの情報を整理して、すっきりと見せることに神経を使います。どの情報をどの順序で、どれくらいの間隔で置くか。ページが分かれていれば自然に生まれる区切りを、1枚の中で作り出す必要があります。
この作業は、ページ数が多い構成より難しい場合もあります。安く作れる方式というより、情報の優先順位を徹底的に整理した形だと考えたほうが近いと思います。
あとから増やすことを前提にしておく
公開後にページが増えるのは、よくあることです。むしろ、最初にすべてを揃えようとしないほうがうまくいきます。実際に多いのは次の2つです。
- 採用ページ公開時は「余裕があれば」という位置づけで提案することが多く、あとから増設する例がよくあります。スタッフを募集する段階になってから作るほうが、書く内容も具体的になります。
- 商品ページ店販に力を入れる場合や、通販サイトへの導線が必要になった場合に追加します。楽天などの外部ストアへ送る形が多いです。
最初から完成形を作ろうとすると、必要かどうか分からないページにも費用がかかります。店の状況が変わったときに足していけばいい。そのために、あとから増やせる構造で作っておくことのほうが重要です。
ページ数ではなく、役割で考える
見積もりを比較するとき、ページ数は分かりやすい指標です。10ページと6ページなら前者のほうが豊かに見えますし、実際に費用も違います。
ただ、ページ数が多いことと、伝わることは別です。役割のはっきりしないページが4つ増えるより、理念とスタッフとメニューが丁寧に作られているほうが、来店の判断材料としては役に立ちます。
サイトを作る前に決めておくとよいのは、「このページで何を伝えるのか」を各ページについて一文で言えるかどうかです。言えないページは、おそらく必要ありません。逆に、言えるページは、たとえ1枚に収める場合でもその要素を残すべきです。
構成を考えるというのは、ページを並べる作業ではなく、伝えたいことを整理する作業だと思います。