ポータルサイトは、やめなくていい
はじめに、一番お伝えしたいことを書きます。
ポータルサイトからの集客は多く、そして実のところ、ポータルは必要です。掲載をやめて自社サイトだけで集客するという選択は、多くのサロンにとって現実的ではありませんし、無理にそうする理由もありません。
制作会社の立場からすると、「ポータルに払っているお金を自社サイトに回しましょう」と言ったほうが仕事につながります。実際、そういう論調の記事もよく見かけます。ただ、現場を見ている実感としては、それは正しくありません。
むしろ逆で、自社サイトがあることによって、ポータル経由の集客も強化されます。この関係を理解しておくことが、予算配分を考えるうえで一番大事な前提だと思っています。
なぜそうなるのか。順を追って書いていきます。
Instagramは人、Webは店、ポータルは金額
美容室の集客を支えているチャネルは、現在おおむね三つです。ポータルサイト、Instagram、自社サイト。この三つは競合するものではなく、伝えられるものがそれぞれ違います。
私は次のように整理しています。
- Instagramは「人」誰が担当するのか、どんなスタイルを得意としているのか、どういう人柄なのか。美容師個人と、その技術が伝わる場所です。
- 自社サイトは「店」どんな空間なのか、何を大事にしている店なのか。サロンそのものの世界観が伝わる場所です。
- ポータルは「金額」いくらかかるのか、いつ空いているのか、どんなクーポンがあるのか。条件を比較し、予約するための場所です。
この三つが揃って、はじめてひとつの店として伝わります。どれかひとつが欠けると、そこだけ情報が空白になる。三位一体という言い方が近いと思います。
ポータルにできること、できないこと
ポータルサイトは、情報とツールの場所です。
営業時間や料金、メニュー、空き状況といった情報が整理され、その場で予約まで完結する。掲載していれば、店を探している人の目に確実に触れます。この機能を自前で用意しようとすれば、相当な手間と費用がかかります。誰もが知っているサービスであることの強さも含めて、これは代替しにくい価値です。
一方で、ポータルには構造上できないことがあります。世界観を表現することです。
掲載されている店舗ページは、すべて同じ枠組みで作られています。写真の大きさも、項目の並びも、文字の大きさも共通です。それは比較するための仕組みとして正しい設計なのですが、比較できるということは、裏を返せば同じ土俵に並べられるということでもあります。
同じ枠の中に並んだとき、差を付けられる要素は限られます。価格、クーポン、口コミの点数。結果として、条件で選ばれやすくなる。ここがポータルの限界であり、同時に、自社サイトが必要になる理由です。
自社サイトがあると、ポータル経由の集客も強くなる
冒頭に書いた「自社サイトがあることでポータルからの集客も強化される」という話に戻ります。
これは、お客さまの行動を考えると分かりやすいと思います。ポータルで気になる店を見つけたあと、多くの人はそのまま予約するわけではありません。店名で検索したり、Instagramを探したりして、どんな店なのかを確かめます。そこで自社サイトが出てくるかどうかで、印象は大きく変わります。
このとき効くのが、写真です。
内装の写真が大きく、きれいに見られること。これが「ここに行きたい」と思ってもらえるかどうかを、かなりの部分で決めていると感じます。髪を切るという行為は、2時間前後をその空間で過ごすということでもあります。どんな場所で過ごすことになるのかが見えると、選ぶ理由が価格以外に生まれます。
つまり自社サイトは、ポータルの代わりに集客する装置ではありません。ポータルで見つけてもらったあと、条件比較から抜け出してもらうための場所です。だからポータルをやめる必要はないし、やめないほうがいい。間口は多いほうがいいからです。
予約ツールを移す例はある
実際の事例として、ポータルの掲載自体をやめたという話はほとんど聞きません。一方で、予約の受付をLINEに移したという例は耳にします。それでもポータルの掲載は続けている、という形です。
新規のお客さまはポータルから来てもらい、二度目以降はLINEで直接やり取りする。役割を分けるという意味では、これも同じ発想だと思います。
スタイル写真だけでは、伝わらないものがある
ここ数年、Instagramを軸にした集客が主流になってきました。スタイル写真を継続的に投稿し、そこから予約につなげる。髪型を変えたいという目的に対して、完成形を見せるのは確かに効果的な方法です。
ただ、スタイル写真だけが並んでいる状態には、抜け落ちているものがあります。
そのスタイルがどんな場所で作られたのか。どういうコンセプトの店なのか。担当した美容師が何にこだわり、どんな人なのか。そうした背景が、どこにも書かれていない。
そしてこれは、ブランディングの話であると同時に、スタイルそのものの価値の話でもあると思っています。
同じ仕上がりの写真でも、どんな空間で、どんな考えを持つ人が作ったのかが分かると、受け取られ方が変わります。背景が見えることで、技術は単価に変換されやすくなる。逆に、スタイル写真だけが流れていく状態では、いつまでも仕上がりの良し悪しだけで比較され続けます。
美容師のこだわりや人間性、店の空気感。それらはスタイルの価値を高めるために大事なことなのに、置き場所がないまま流れていることが多い。自社サイトが引き受けるべきなのは、ここだと考えています。
三つをどう組み合わせるか
整理すると、考え方はそれほど複雑ではありません。三つすべてを使い、それぞれに違う仕事をさせる。それだけです。
- ポータルは掲載を続ける新規の入口と予約ツールとして機能しています。プランの見直しは、自社サイトが育ってから検討すれば十分です。
- Instagramは人と技術を出すスタイル写真に加えて、担当者が何を考えているかが少しでも見えるようにする。プロフィール欄から自社サイトへ導線を引いておきます。
- 自社サイトは店の空気を伝える内装写真を大きく、コンセプトを言葉にして置く。ポータルとInstagramの両方から、最終的にここへ流れてくる構造を作ります。
- 予約は入りやすいところへ送るサイト内に予約機能を持つ必要はありません。使っている予約サービスやLINEへ、迷わず進める形にしておけば十分です。
この形にしておくと、それぞれの弱点を他の二つが補います。ポータルで価格を比較されても、サイトで空気が伝わる。サイトを見て気になっても、予約はポータルで完結する。Instagramで人を知り、サイトで店を知る。
三つのうちどれかをやめようとすると、この補い合いが崩れます。「ポータルをやめるべきか」という問いが立った時点で、選択肢が二つに絞られてしまっているのだと思います。
予算の話をすると、ポータルの掲載費は毎月出ていく費用で、自社サイトは一度作れば残る資産です。性質が違うので、どちらが得かという比較にはあまり意味がありません。ただ、掲載費を何年も払い続けているのに、自社サイトには一度も投資していないという状態であれば、配分を見直す価値はあります。
選ぶのではなく、分ける
ポータルサイトへの依存が話題になるとき、議論はたいてい「使うか、やめるか」の形を取ります。けれど実際に必要なのは、どれを切るかを決めることではなく、それぞれに何をさせるかを決めることです。
ポータルは情報とツール。Instagramは人。自社サイトは店。この三つが噛み合っていれば、どれかひとつに依存している状態にはなりません。依存が問題になるのは、他の二つが空白のままだからです。
そしてもし、三つのうち自社サイトだけが欠けているとしたら、そこに入るはずだったものは「店の世界観」です。どんな空間で、何を大事にしていて、誰がそこにいるのか。
それは価格やクーポンでは伝わりませんし、スタイル写真の中にも写っていません。伝える場所を持っているかどうかが、選ばれ方を変えていくのだと思います。