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サロンの世界観は写真で決まる ― 撮影ディレクションの役割

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美容室のホームページを開いたとき、訪れた人が最初に受け取るのは文章ではなく空気感です。そしてそれを伝えているのは、ほぼ写真です。どれだけ設計とデザインを積み上げても、写真が弱ければそこで印象が決まってしまいます。この記事では、サロンの撮影をどう進めるか、何を撮るべきか、そして良い写真とそうでない写真の差はどこにあるのかを書きます。

写真がサイトの印象のほとんどを決める

サロンのサイト制作で、費用の配分に迷ったときにお伝えしているのは、ページ数を減らしてでも撮影に回したほうがいい、ということです。
理由は単純で、サイトを開いた人が最初に受け取るものが写真だからです。内装の光の入り方、什器の質感、空間の広がり。言葉にしにくい部分が、写真からは一瞬で伝わります。

逆に言えば、ここが弱いと他の工程が効きません。丁寧に設計し、書体を選び、余白を調整しても、写真がスマートフォンで撮った記録用のカットであれば、そこで印象は決まります。
撮影は、サイトの品質を決める工程であって、追加のオプションではないと考えています。

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誰が撮るかは、ひとつではない

撮影と聞くと、制作会社がカメラマンを手配して一日かけて撮る、という形を想像されるかもしれません。実際には、こちらから外部のカメラマンをアサインするケースはそれほど多くありません。
美容業界はカメラマンとのつながりが多い業界です。日常的にスタイル写真を撮っているので、撮影そのものが身近にあります。その環境を活かしたほうが、費用も進行も無理がありません。

実際には、次の4つのいずれかになることが多いです。

  • サロンの知り合いのカメラマンに依頼する最も多いパターンです。すでに関係があるので、店の雰囲気を理解している方であることも多く、進行もスムーズです。
  • 内装会社から写真を共有してもらう内装を手がけた施工会社が竣工写真を撮影している場合があります。空間としての質が高く撮られているので、素材として使えます。
  • サロンスタッフが自分で撮影するカメラが趣味のスタッフがいるサロンは意外と多く、機材も技術も十分なことがあります。
  • 当社で撮影する他の方法が取れない場合や、細かくコントロールしたい場合に対応します。

知り合いのカメラマンに依頼する場合や、スタッフが撮影する場合は、こちらから撮影に立ち会うか、事前に指示をお渡しします。香盤表を作って必要なカットを一覧にしたり、どういうイメージで撮りたいかを共有したり。撮る人が変わっても、仕上がりが揃うようにするための工程です。
つまり撮影ディレクションとは、シャッターを切ることではなく、何をどう撮るかを設計することだと考えています。

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押さえておきたいカット

サロンの撮影で必要になるカットは、おおむね決まっています。

外観 初めて訪れる人が探す目印になります。看板や入口の見え方を含めて。
内観の引き 空間全体が分かるカット。広さ、天井の高さ、席の配置が伝わります。
什器の寄り 素材の質感が分かる距離。椅子、シャンプー台、棚、照明。細部にその店の好みが表れます。
鏡越し サロンならではの構図。奥行きが生まれ、空間の印象が立体的になります。
手元 道具や施術中の手元。人物の顔が写らなくても、仕事の気配が伝わります。
光の入り方 窓から差し込む光、照明の落ち方。その空間の時間帯や空気を決める要素です。

この中で特に多めに撮っておきたいのが、内装のカットとイメージカットです。
デザインを組む段階になると、必要な写真の形やサイズが具体的に決まってきます。横長で使いたい、縦長で使いたい、余白に文字を置きたい。撮影時点ではそこまで確定していないので、選択肢が多いほど設計の自由度が上がります。
足りなくて撮り直すよりも、多めに撮っておくほうが確実です。

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早朝に撮ると、光が穏やかになる

撮影の時間帯は、仕上がりを左右します。おすすめは早朝です。
日中の強い光は、窓際が白く飛んでしまいます。明るく撮れているようで、実際には情報が失われている状態です。素材の質感も、影の落ち方も再現できません。早朝の柔らかい光であれば、空間全体が均一に見え、質感が残ります。

現実的な事情としても、早朝は都合が良いことが多いです。営業中は当然撮影できませんし、定休日を一日使えるとは限りません。開店前の数時間であれば、日程の調整もしやすくなります。
サロンにとっては早い時間の集合になりますが、仕上がりの差は確実に出ます。

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季節が写り込むものは避ける

撮らないほうがいいものについて、ひとつだけ明確な基準があります。季節が特定できるものです。
桜の花が飾られている、ストーブが置かれている、クリスマスの装飾がある。撮影した時期がはっきり分かる写真は、その季節にしか使えません。一年のうち大半の期間、サイトの写真が現実と食い違うことになります。

サイトは何年も使うものです。撮影当日は季節の飾りがあるのが自然な状態でも、それを片付けてから撮るだけで、その写真の寿命が何倍にもなります。
同じ考え方で、期間限定のポスターやキャンペーンの掲示物も外しておきます。写真そのものが古びる要因を、撮影時点で取り除いておくという発想です。

スタイル写真については、そもそもサイトには載せない前提で考えています。トレンドの移り変わりが速く、半年で古く見え始めるからです。Instagramに集約し、サイトからは連携させるほうが現実的です。

片づけすぎると、空気が消える

同じ空間を撮っても、写真によって差が出ます。何が違うのか。
私が良いと思うのは、人が写っていなくても、そこでサロンワークが行われていると感じられる写真です。

撮影の前に片付けをするのは当然ですが、片づけすぎないほうがいい。これが意外と難しいところです。
すべてを整然と並べ、余計なものを一切排除した空間は、確かに美しく写ります。ただ、生活感も、営みの気配も消えます。誰も使っていないショールームのような写真になり、そこで髪を切ってもらう自分を想像しにくくなる。

道具が使う位置に置かれている。タオルがたたまれて積まれている。鏡の前に、その日の仕事が始まる気配がある。そういう要素が残っていると、空間に温度が生まれます。
②の記事でも書きましたが、目指しているのは、そのサロンにいるかのような空気感です。空気は、完璧に整えられた空間からは立ち上がってきません。

服装はシンプルに

人物が入るカットでは、服装が仕上がりに大きく影響します。サロンの雰囲気にもよりますが、できるだけシンプルで、清潔感のあるものをお願いしています。
柄物や色数の多い服は、それ自体が主張してしまい、空間の印象を奪います。黒やグレーの無地であれば、内装の色と喧嘩しません。サロンの雰囲気を伝えたいのに、服が前に出てしまうと本末転倒です。
これは撮影当日ではなく、事前にお伝えしておく必要があります。

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デザインを先に見せてから撮る

撮影の前に、デザインのラフをお見せするようにしています。
どこにどんな写真が入るのか、どういう構図が必要なのかが分かっていれば、撮る側も判断しやすくなります。横長のスペースに使うのか、人物が左に寄っている必要があるのか。完成形を共有してから撮るのと、撮ってから当てはめるのとでは、結果が違います。

言葉だけで伝わりにくい部分は、参考になる写真を集めて共有します。こういう光の感じ、こういう距離感、こういうトーン。フォトストックの画像でも、他の空間の写真でも構いません。イメージのすり合わせができていれば、撮影当日の判断が早くなります。
特に、撮る人が毎回違う可能性のある進め方をしている以上、この共有が品質を揃える唯一の方法です。

費用については、外部のカメラマンをアサインする必要がある場合に発生します。ただ、これまで書いてきたとおり、そのケースはあまり多くありません。サロン側にすでにつながりがあることが大半なので、まずは現状の体制で何ができるかを確認するところから始めます。

撮影は、サイトに残る唯一の実物

サイトに載るもののうち、文章もデザインも、後から書き換えられます。ただ、写真だけは撮り直しが簡単ではありません。日程を組み、光の条件を揃え、店を整える必要があるからです。
だからこそ、一度きちんと撮っておく価値があります。内装が新しいうち、店が一番いい状態のときに撮った写真は、その後何年も使えます。

サロンの世界観は写真で決まる、というのは比喩ではありません。読む前に見られ、読まれなくても残るのが写真です。
予算を配分するとき、ここを削ると何が失われるのかを、一度考えてみていただければと思います。

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淸水 和豊 Kazutoyo Shimizu

DELAUNAY Inc. Founder / Direction / Design / Front-end

1983年生まれ。都内のWeb制作会社を経て2017年に株式会社ドロネーを設立。美容学校卒業後、都内のヘアサロンに勤務した経験を活かし、美容室専門のWebサイト制作プロジェクト【Salon from DELAUNAY】を立ち上げる。